導入事例


株式会社創英

  • 導入製品
    ・高速無線綴ライン CABS4000 ・ペラ丁合鞍掛け中綴じ製本システム StitchLiner MarkⅢ(2ライン)

ジャストインタイム対応を強化、在庫レスニーズに応える
CABS4000 / StitchLiner MarkIII

ボリュームゾーンが下がり、小回りの利く生産体制に投資  
 株式会社創英はホリゾンの高速無線綴じライン『CABS4000』、2台のペラ丁合鞍掛け中綴じ製本システム『StitchLiner MarkIII』で、顧客が望むタイミングで納品するジャストインタイムの体制を強化した。多品種・小ロットの生 産効率を高めると同時に、人員配置の柔軟性も生まれている。同社は1976年にマニュアル(取扱説明書)の印刷から事業を開始。印刷をコアに顧客のニーズに沿って上流、下流の工程へと事業領域を拡大し、現在では、デザインからロジスティックまでを取り込むほか、デジタルコンテンツ、システム開発にも力を入れている。
 その結果、受注品目はマニュアル以外にも、書籍・雑誌、投資家向けの企業IR関連にまで広がり、年間約200社と取り引きするまでになった。環境への意識を高めている取引先のメーカーや上場企業の要望に対しては、印刷物へのカーボンオフセット対応やFSC認証マークの表示などで応える。従業員は100名。菊全判4色機1台、A全判4色機1台、菊全判2色機1台、菊半裁4色機1台の枚葉オフセット印刷機が稼動し、無線綴じ機、中綴じ機のほか、折り機、断裁機で加工している。
 同社取締役経営管理部長の滝川秀貴氏は、印刷需要の傾向として「近年、小ロット・多品種化、短納期化が続いています。

調達部統括課長 南 勇治氏

 また、お客様は問題解決を手伝うパートナーを探しています」と指摘する。同社調達部統括課長の南勇治氏は、「マニュアルはもともとジャストインタイム。お客様は在庫を持ちたくないので、製品の生産数量によってマニュアルのオーダーを頂き、適正な数を生産して納品します。短納期化の背景にはそうした在庫レスのニーズがあり、欲しい部数を欲しいタイミングでという流れが加速しています。店舗ごとに表紙を名入れする冊子も増えており、小ロット・多品種化が進んでいます」と状況を分析する。
 ここ数年、受注ロットのボリュームは2~3万部から1,000~5,000部へとシフト。印刷物の配布対象者をセグメントし、小口に分割して種類を増やす傾向にあり、小ロット・多品種化が生産効率を下げる要因になっていた。顧客が望むタイミングで納品するサービスを成り立たせ、小ロット・多品種に対応した生産体制を作るためには、小回りの利く設備への投資が必要だった。

“手返し”が早いCABS、チョコ停がほぼゼロに

『CABS4000』は他社製の無線綴じ機からの入れ替えで2021年4月に導入。1日の生産量が3ジョブから5、6ジョブまで拡大し、時間当たりの生産性は確実に向上している。
「小ロットは手返しが大事と考えています。セット時間の短縮 に加えてCABS4000に入れ替えてからチョコ停がほとんど ありません。従来、トラブルが生じると機械を止めてオペレーターが冊子を抜いて再起動する必要がありました。CABS4000は自動排出するので機械が停まらずに流れます」(南 課長)。従来機は1ジョブ当たり、4、5回も止まることがあった。それが「ほぼゼロ」となっている。
主力製品のマニュアルは、同梱される製品・商品の一部として扱われるため、乱丁、落丁が許されない。CCDカメラによる検査装置は以前の無線綴じラインにも搭載されていたが、「精度はCABSの方がかなり高いですね。モニタ上でリスクのパーセンテージも表示されます」(南課長)。しかも、1つのモニタで丁合の各駒の状況を確認でき、お客様が見学に訪れた際にも品質管理の仕組みが説明しやすくなった。
「小ロット・多品種対応、操作性、生産効率のトータルでホリゾンのCABSにかなう機械はないという判断で投資に至りました」という滝川取締役は、中でもオペレーター育成の効率化に期待した。製本工程は、折り、丁合、綴じ、断裁と多くのプロセスの中で刷本を制御しながら、製品に仕上げる重要なパートとなる。高い歩留まりが要求されるので、専門技能と経 験を備えた専任のオペレーターが必要で、人員の育成には時間がかかる。同社でも『CABS4000』導入前は、専門技能を持った特定のスタッフへの依存度が高かった。
「オペレーター育成はかつて年単位を要していました。CABSは1年あれば数名が使えるようになるぐらいの差があると思います」(滝川取締役)。時期によって特定の機械に仕事が集中しても、人員配置を変えることが難しかったが、無線綴じ機、中綴じ機を問わずに操作できるオペレーターが増えれば、繁閑に応じて柔軟にオペレーターが配置でき、製本工程にかかる固定費の削減にもつながる。

 「多能工化は全工程で取り組んでいます。多能工と会社の仕組み、新しい機械を組み合わせて、変化するお客様のニーズに対応したいと考えています」(滝川取締役)。今後は無線綴じラインに、現在『StitchLiner MarkIII』を操作している女性オペレーターを配属。無線綴じ機の操作を習得させ、活躍の場を広げようとしている。「新台の立ち上げに際しては営業担当者も、サービスマンも来ている方が気持ちよく対応して頂きました。アフターサービスでも依頼にすぐに応え、オペレーターに色々教えてもらっていることを高く評価しています」(南課長)というサポートの安心感が、オペレーターの育成にもつながっている。
 小ロット・多品種の案件は価格面での折り合いがつかず に失注するケースがあった。『CABS4000』を導入して以降は、顧客の要望に沿う価格設定でも利益が出るようになっている。「どうしても受注を諦めなければならない場面がありましたが、ホリゾンの機械を入れてからはだいぶ変わりました。 外注に出さざるを得なかった案件が内製化できるようになったことも大きな変化です」(滝川取締役)。また、薄本や横本が生産できるようになったことで、顧客に提案できる商材の幅が広がり、営業面でもメリットを感じている。

小ロットも長いロットも強いStitchLiner

製造部製本課 和田 帆乃香氏

 『StitchLiner MarkIII』を導入する前、同社では折丁を鞍 掛けする製本ラインが中綴じの主力だった。しかし、セット替えに時間がかかるため、小ロット・多品種生産には向かず、顧客のニーズに対応しにくくなっていた。 「StitchLinerは導入前から小ロット・多品種対応で、操作性が良いと聞いていました。想像以上に品質が上がり、操作性でも大きなメリットがあります。費用対効果もいいぞ、と実感したので2台目も導入することにしました」(滝川取締役)
 2018年に導入した1号機には未経験の女性オペレーターを配属。翌年の2号機にも未経験者を機長に据えた。
 同社製造部製本課の和田帆乃香氏は入社後に折り機を担当し、その半年後に『StitchLiner MarkIII』の2号機を任された。「声をかけて頂いた当日は正直、悩みました」というが、1号機を担当するオペレーターから「折り機の経験が活かせるのではないか」とのアドバイスを受け、挑戦することになった。

 「機械に苦手意識がありましたが、タッチパネルや説明書は工程ごとに図解されていて、覚えていけば使えると自信が付いていきました。サービス担当の方の説明も分かりやすかったですね」(和田氏)。機長として2年半が経過し、機械操作以外にも品質やメンテナンスなどにも目が向くようになった。
 『StitchLiner MarkIII』が稼動し始めると、「1台目を導入して小ロット生産をイメージしていましたが、長いロットも強く、“できる機械”と感じました。回転数も出るし、手返しがずば抜けて早いですね。今後、中綴じ機はStitchLiner一本でいこうと考えています」(南課長)と、まとまったロットにも対 応できることが分かった。最高1万から1万5,000部までと想定していた当初の分岐点は2万5,000部にまで向上。2台体制なので最高5万部までがカバーでき、対応できる部数のレンジが広がっている。最低2人のオペレーターが必要な鞍掛をする製本ラインに比べて、利益率も高い。
 和田氏は「同じホリゾンなので使ってみたいという好奇心はあります」と、『StitchLiner MarkIII』の経験を活かして『CABS4000』の操作にも関心を寄せている。

JDF ワークフロー『iCE LiNK』導入へ

 同社は経営情報システム(MIS)を独自に開発している。 営業担当者は受注した仕様をMISに入力。作業指示書が生成されて各現場に流れる。南課長は入力された情報をもとに、予定組の作成や進捗の管理をしている。また、作業実績はジョブごとに着手・完了を入力。MISで機械の稼働時間を割り出し、実原価の算出や機械停止の原因分析などに反映させる。ただし、現在、印刷工程はバーコード入力だが、製本工程では手で日報を記入しており、作業者の負担となっている。同社ではそうした課題の解消と緻密な状況分析を目指すため、複数の後加工機の稼動状況を自動で収集し、稼動時間の可視化や分析を可能にしたワークフローシステム『iCE LiNK』の導入を検討している。南課長は「加工機のチョコ停の頻度から原因を究明してさらに稼動率を上げることが可能になります。メンテナンスの時期も知らせてくれるので、計画的に保守ができ、突発的な停止も防止して生産性を上げたいと考えています。進捗管理、原価管理もやりやすくなるでしょう」と期待する。滝川取締役は「小ロット・多品種化、短納期 化が進んでいきます。現場の自動化、省人化の流れに乗れるように、オペレーターの育成と最適なタイミングでの設備投資を続けていきます。ぜひ、iCE LiNKを導入したいと思っており、当社のMISとの連携を含めて、ホリゾンのスタッフと意見交換したいと考えています」と述べる。今回、顧客のビジネスのスピードに応じた納品形態の強化に向けた施策の中で、『CABS4000』、『StitchLiner MarkIII』が成果を上げた。今後は『iCE LiNK』の導入を視野に入れ、一層、顧客の課題解決につながる生産体制を築いていく。