導入事例


株式会社スバルグラフィック

  • 導入製品
    ・高速無線綴ライン CABS4000S ペラ丁合鞍掛け中綴じ製本システム StitchLiner5500(2ライン)
    ・紙折機 AFC-566FKT+PST-40(3ライン)
    ・紙折機 AF-762KLS / ロータリーダイカットシステム RD-4055 / ミシン機(菊判半裁) VP-66 / 筋入れ折機 CRF-362

生産ロットのレンジ拡大、利益に貢献する高速無線綴じライン CABS4000
外注比率が減り、 数字がきっちり出ています

ワンストップ体制強化、機会損失を防止  
   株式会社スバルグラフィックは、高速無線綴じライン『CABS4000S』で内製化比率を高めるとともに、印刷から製本、出荷までの一括受託体制を強化し、顧客の利便性を向上した。同社役員の松本仁志氏は「外注比率が下がり、決算上も数字がきっちり出ています。利益に貢献してもらっています」と導入効果を語っている。 同社は1982年に製版会社として創業。主に印刷会社に向けて、印刷の中間生成物である製版フィルムを供給してきた。1990年代にプリプレス工程のデジタル化が急速に進み、印刷会社が自社内に製版工程を取り込み始めると、主力の製版フィルム需要が減少し、将来的に事業継続の危機が予測された。一方で顧客からは製版フィルムに限らず、印刷業務までの要望が寄せられるようになっていた。
 松本役員は「印刷業界は分業制で成り立っていますが、お客様にとっては時間もコストもかかります。そうしたお客様のご要望が耳に入り、一括受託の業態に変化した方が生き残れると判断しました」と、1999年に印刷部門を立ち上げた背景を説明する。2003年には製本・加工サービスも開始し、出荷までのワンストップサービス体制を確立した。
 最初に導入した後加工機はホリゾンの断裁機と卓上中綴じ機だった。「我々が受注するロットのスケール感、お客様のニーズがホリゾンの機械とマッチしていました。熟練でなくても使いやすい機械です」(松本役員)という実績から、その後、製品・加工の業務拡張に伴う設備増強に際しても、必然的にホリゾンの機械を選択してきた。

 現在の従業員数は85名。東京都中野区野方の本社工場、埼玉県戸田市の戸田工場、東京都板橋区の舟渡工場の3つの拠点に、菊半裁8色機、四六半裁5色機、四六全判8色機、菊全判4色両面兼用機、四六全判5色機の印刷設備と、無線綴じライン、ペラ丁合中綴じ機、鞍掛中綴じ機などの製本・加工機を備えている。 2020年2月には、3拠点それぞれに印刷機、加工設備を持つ体制を見直し、舟渡工場に製本・加工・出荷を集約。前年に導入した『CABS 4000S』、ペラ丁合鞍掛け中綴じ製本システム『StitchLiner 5500』、鞍掛中綴じ機を中心に、製本・加工の機能を整えた。
 『CABS4000S』を導入した動機は、「お客様のニーズ、受注内容が変わってきました。ある程度のロットを超えると外注に頼らざるを得ず、売上と比例して外注費が上がる状況でした」(松本役員)という課題解消だった。近年、首都圏では3月の年度末を中心に、繁忙期に製本の外注先がひっ迫する状況が生じている。同社でも増加している中ロットの需要領域に応じきれず、機会損失につながるリスクが高まっていた。加えて執行役員 工場長の坂井陽一氏は「ペラや二つ折、巻三つ折りのチラシなど端物系の需要が極端に少なくなってきました。今までと違う需要を取り込んでいく中で、CABSの導入に繋がりました」と、冊子系を重視した受注戦略への変化を挙げている。

未経験者を機長に抜擢

 『CABS4000S』導入前の無線綴じ機は4鞍の『BQ-470』。丁合、綴じ、三方断裁の無線綴じラインの扱いは初めてだったが、外部から専門の技術者を雇わず、オペレータに社員を抜擢した。
 同社では印刷部門、製本部門を立ち上げる時も、社内の技術者を中心にオペレーションを組み上げた。印刷部門では製版の技術者を印刷機の機長とすることで、網点や色味を評価する視点が活かされた。製本部門では面付のノウハウが役立っている。印刷・加工・出荷を担う坂井工場長はシステムの技術を持った元プリプレス担当。後工程の知見を組み入れた社内の基幹業務システムは坂井工場長がファイルメーカーで開発している。

工場長  坂井 陽一 氏

「当社では営業から加工に回ることもあります。得意先の性質を知っている人員が工場に入ることで良い影響が生まれます。みんなでやっていくという社風です」と、松本役員は良い意味で規定概念に捉われない“素人集団”と表現する。印刷の色調は数値で管理するカラーマネジメントを採用。製本設備はフルスペックで導入し、勘と経験に基づくセットアップを極力排除した。属人的な業務を減らすことで他部門からの柔軟な異動を可能にし、多くの社員が業務の流れや各工程の事情を把握できるようにしている。「CABS4000Sには製本の未経験者にチャレンジしてもらいました。ホリゾンのサポートメンバーに親身になって教えて頂き、課題を克服しながら2ヵ月ぐらいで立ち上がりました」(坂井工場長)。

操作性の高さ、丁寧なアドバイス

加工部  鳥居 美穂 氏

 『CABS4000S』の機長を担う加工部の鳥居美穂氏は、「製本機の扱いが未経験だったので最初は不安がありました。ただ、未経験の仕事だからこそ、すごくやりがいが感じられると思い、挑戦しました」と、製本ラインのオペレータに抜擢された時を振り返る。12鞍のCABSのラインを初めて見た時には「今までの製本機に比べて大きいのでビックリしました」と憂慮したが、ホリゾンのサービスマンのサポートを受けながら、少しずつ知識を身に着けていった。その後、自ら操作した丁合機、綴じ機、三方断裁機を通って、搬送ベルトから流れてくる本を見た時、「普段手に取っている本がこうやってできるんだ」と、その心配は喜びと安心に変わった。
 未経験者がわずか2ヵ月で無線綴じラインを扱える背景には「セット替えが自動で、なおかつ工具を使わず、力仕事もいらないのですごく助かってます」(鳥居氏)という『CABS4000S』の操作性の高さもあった。順調に稼動している現在でも、保守サービスなどの時にホリゾンのサービスマンに相談することがある。「ホリゾンのサービスマンの対応がとても早く、アドバイスもたくさん頂けて、優しく丁寧に細かいことまで教えてもらっています」とアフターサービスに信頼を寄せる。今では月間平均で約30万冊、100アイテムを生産している。

工場見学が増加、製本までの受注につながる

第一営業部 部長 鈴木 伸資氏

 松本役員は経営面から『CABS4000S』の投資効果について「新型コロナで売上は厳しい状況ですが、外に出るものを内部に取り込めました。お客様からの印刷会社への要望は幅広いものがあります。少しでも中で生産できる製品が増えれば、利益率が上がります。効果は高いですね」と強調する。
同社執行役員第一営業部部長の鈴木伸資氏は『CABS4000S』による受注ロットのレンジ拡大について、営業の視点から「当社の一番の売りは全ての工程で自社生産できるところです。スケジュールやコストの面でお客様の要望にお応えできていると思っています」と評価する。顧客が工場を見学に来る機会が増え、「同業の印刷業の方は、きっちりと製品が仕上がるかを確認しに来られると思います。実際に動いているところを見て頂いて、安心して帰って頂けていると思います」との手応えを感じており、「いきなり良い製品が上がってきましたので、自信持ってお客様にご提案できています。見学に来られた出版会社の方から、製本の仕事まで頂ける流れにつながりました」との効果が上がっている。
 製品に責任を持つ坂井工場長にとって最も大きかったのが、無線綴じの品質だった。「他社に生産委託していた時には年に1、2回、落丁・乱丁が発生していました。CABSを導入してからそうした事故は全くありません。品質面に関してはカメラ検知、厚み検知、重量検知の3段階で検査しているので信頼性は高いと感じています。年に1回、2回でも事故はダメです。それがなくなったことは大きいですね」と、品質管理の責任者として検査機能をポイントに上げている。

A 4 横本、大サイズ、多頁にも挑戦

 CABS 4000Sは2020年1月に本格稼働に入り、同年3月まで順調に稼動。しかし、初の緊急事態宣言が発出した同年4月から経済が徐々に動き出す7月まで、国内の印刷需要は急速に萎んだ。同社も工場の稼動が極端に低下したが、この間、製本工場ではA4サイズの横本やB4サイズの縦本、雁垂れ表紙、チョン付加工(仮糊)を施した400頁の厚い本など、外注に頼らざるを得なかった加工形態に挑戦。ホリゾンのスタッフが毎週、アドバイスして技術力を磨いた。
 鳥居氏は「今までA4サイズやB5サイズがほとんどでしたが、この機会に大きさはもちろん、12鞍以上の36台に及ぶ厚い本などを少しでも経験できたらと考えました」と、厳しい状況を前向きに捉えた。鈴木部長も「営業に配られた試作品を持って、お客様を訪問し、“社内でできるようになりました、今までよりもご期待に添えます”とご提案しています」と、新しい商材を営業活動に取り入れた。生産・営業が一体となって新しい領域に切り込んだ結果、実際の受注につながり始めている。

 さらなる利益率向上に向けて同社では基幹業務システムによる原価管理に力を入れている。コロナ禍を乗り切るべく、受注一点当たりの原価、利益を可視化するとともに、社内に適した仕事の単価を下げ、逆ならば単価を上げるよう価格戦略を見直した。売上重視から内製化できる業務を獲得するよう営業方針を変えることで、利益率をさらに改善していく。
 将来的には基幹業務システムと、印刷機や製本機などのデバイスをデータ連携させ、稼動記録入力の自動化を見据えている。松本役員は「情報の乱れがトラブルにつながります。ある程度のところまで自動化できれば人的な間違いが減ると考えています」とスマートファクトリー化を展望。坂井工場長は基幹業務システムから、ワークフローシステムにCSV化した受注案件の仕様情報を取り込み、機械のセットアップの自動化も見据えている。