導入事例


日経印刷株式会社

  • 導入製品
    ・ペラ丁合鞍掛け中綴じ製本システム StitchLiner MarkⅢ・StitchLiner 5500

ワンマンオペレーションで“稼ぐ”中綴じ製本システム
新人1人による稼働が衝撃的でした

月産130万冊に成長した中綴じ製本  
日経印刷株式会社は、ペラ丁合鞍掛け中綴じ製本システム『StitchLiner MarkⅢ』と『StitchLiner 5500』を設置し、中綴じ製本工程で少人数のオペレーションを実現した。基本的に各1名の体制で両機種を運用しており、同社では“1人当たりの稼ぎ”が高い機械と評価している。 同社は1964年10月、東京オリンピックの開幕日に創業。モノクロ頁物印刷を中心に事業を拡大し、スピード対応と品質で業界内での評価を高めていった。現在の主要顧客は出版社や教育関連、製造業、同業者、官公庁。このうち同業者の比率は4割を占める。創業からの強みであるスピード対応と品質が同業者からも頼られている。1997年には浮間工場を竣工。納期の柔軟性を高めるために、同工場に無線綴じ機を導入して製本事業を立ち上げた。2008年には主力工場であるグラフィックガーデンを建設し、生産体制を強化。いずれも東京都板橋区に立地しているのはスピードへの対応力を担保する目的がある。同社専務取締役の久保田哲司氏は「お客様に都内で一番早く頁物をお届けしようということです」と述べる。

同社にとって大きな転機となったのはカラー印刷への取り組みだった。2001年に菊全判8色両面兼用印刷機の導入を皮切りにカラー印刷の受注を拡大。カラーの写真集や学参物に加え、パンフレットなどの商業用の頁物印刷にも業容を広げた結果、中綴じ製本の需要が増えていった。 同社ではグラフィックガーデン竣工と同時に、当時でも5割に達していた中綴じ業務の対応を図るため、6鞍掛の中綴じ製本ラインを導入。しかし、当時から2鞍までが8割、4鞍以上が2割と、少ない頁数でしかもロットが短い案件が多かった。中綴じ製本のノウハウを築くための目的もあって、鞍掛けタイプの機械を選択したものの、実際の業務とはミスマッチが生じ、生産性も上がらなかった。「ある協力会社で見たのがホリゾンの中綴じ機でした。衝撃的だったのは入ったばかりの新人一人が動かして、普通に生産していたことです。ホリゾンの機械は当社の仕事の内容にマッチするだろうと判断し、導入を決めました」(久保田専務取締役)久保田専務取締役の見込み通り、2011年7月に導入した『StitchLiner 5500』は順調に稼働。少頁・少部数・多品種の生産を集中させた結果、既設の鞍掛け中綴じ機の稼働率が向上し、全体のアウトプット量が増えた。2018年11月には『StitchLiner MarkⅢ』を増設。現在、無線綴じ製本の月産平均約100万冊に対し、中綴じ製本が月産平均約130万冊にまで成長している。

入社1年目でメインオペレータに

製本部中綴課 相馬 利哉氏

『StitchLiner 5500』、『StitchLiner MarkⅢ』ともに各1名のオペレータが操作している。既設の中綴じ機では機長1名に2、3人がサポートにつく。無線綴じ機は常時4名、多い時で10人がラインにつくという。「設備は稼げることが大事なところです。StitchLinerは“1人当たりの稼ぎ”で非常に高い数値を出しています。ラインがコの字型になっているのは1人で生産するための形状だと聞きました。当然1人当たりの数字は高くなりますので、イコール稼ぐ機械ということです」(同社製本部部長 山本裕司氏) しかも、メインオペレータの一人は入社1年目の社員。半日で基本操作を覚え、1週間程度のトレーニングで生産を始めることができた。 同社は製本業務を始めた当初、技術の数値化に着手。カラー印刷を始めた時にも数値によるカラーマネジメントを取り入れ、感覚に頼る属人的なスキルを可視化し、技術の標準化を進めている。これにより技術習得の迅速化が図られている。その取り組みがベースとなり、各種調整機構が自動化されたStitchLinerのシンプルな操作が技術習得の迅速化に寄与した。

「機械が自動で動いていてくれることと数値による機械運用の経験から、立ち上げはすごく早くできました。扱いやすさは抜群だと思います。いいなと思うのは数字をいくつか入力すると全体が動いてくれるところです。他のメーカーの機械は自動化と言っても操作が複雑だったりするんですよ」(山本部長)実際に操作している入社10年目の製本部 中綴課の相馬利哉氏は「誰でも使いやすいように分かりやすく説明書が作られており、本稼働までもっていくまでにはそれほど時間がかかりませんでした。もう一人の女性のオペレータはMarkⅢから操作を始めましたが、すんなりと覚えられ、5500が立ち上がったのと同じぐらいの期間で本稼働まで持っていくことができました」とStitchLinerの立ち上げと習得の期間の短さを実感している。

“スピード”という強みを磨く

製本部長 山本 裕司氏

 StitchLinerは、“スピード”という同社の強みをさらに強固にした。24ページで少部数の中綴じ冊子であれば最短で当日納品を可能にしている。 「一度に5冊分が下版されても、スケジュール通りに対応できるかが現場には問われます。お客様からも生産能力を要求されていると感じます」(久保田専務取締役)と、生産部門は下版数を問わず納期に沿ってジョブ数をこなす必要がある。StichLinerは1ライン当たり1日で平均9~10点を生産。20部程度の少部数のジョブでは1日に最大で36点を生産したこともある。

小口製本の生産性の高さについて、久保田専務取締役はセットアップの自動化に加え、ペラ丁合方式を挙げている。「学参物は部数が少しずつ減っています。決められた期間内に、数百部という少部数で、教科ごとに様々な種類のものを作らなければいけません。鞍掛け丁合ではどうしても折り工程が入り、かつセット換えにも時間がかかります。ホリゾンの機械は断裁して丁合機に載せるだけでスタートできます。これが大きな違いです。機種選定理由は仕事の切り換え時間の短さが一番の要素でした」と評価。納期が短くなったことで顧客満足度が上がり、新たな受注につながるケースが出るなど、営業的な効果も現れている。

デジタルワークフローからスマートファクトリーへ

同社は独自開発の基幹システム『プリントステーション』で業務を集中管理している。様々な部署からのジョブ情報や進捗の確認、生産部門からの作業実績の収集などを通して、業務を効率化。製本ワークフローシステム『pXnet』にはジョブ情報を送信してセットアップに必要になる数値入力を削減。また、pXnetに上がってきたStitchLinerの稼働状況や作業実績を吸い上げて、工程や利益を管理している。 相馬氏は「StitchLinerではセットアップ時に入力作業がほとんどありません。鞍掛けの中綴じ機は作業指示書を見て、手動で入力する必要があります。ホリゾンの機械は早ければ5分ぐらいでジョブチェンジができます。点数が多くなればなるほど5分という時間は貴重です」と述べる。 StitchLinerの進捗情報はpXnetを通してプリントステーションに送信。管理者は現場にいなくても遠隔で進捗率や稼働状況を把握することができる。山本部長は「人が入力すると間違いが必ず出てしまいます。基幹システムのジョブデータからバーコードを出力したり、データを直接流したりすることで、そうしたミスが出ないようにしています。また、事務所のパソコンで本来稼働中の機械が停まっていたら、現場に駆けつけて状況を見に行くことが可能です」

高い精度と安心の検査装置で品質保証

  綴じの精度については「それほど差があるという印象はありません」(山本部長)と既設の中綴じ機と比べて遜色がない。相馬氏は「むしろ折り工程を挟まないので見開きの精度が良いと思います」と精度が上回る部分も感じている。また、バーコード検査による頁の乱丁・落丁防止について「小部数で大量に作る時に、載せ間違えをゼロにすることは難しいですね。学年別に中身が違った英語の学参物はパッと見てわからないものもあります。検査装置はシビアな仕事に欠かせません」と、今後、品質保証の防波堤として位置付けている。
 現在、製本部門の課題は繁閑の差。年々、人員配置が難しくなっている。機械間でも繁閑が生じることがあり、山本部長は「それには自動化や標準化を進め、特定の社員しか関われない業務を減らすとともに、様々な工程に関われるマルチプレイヤーを育てる必要があります」と、柔軟な生産体制の構築に向けても、扱いやすく、検査機能等で品質面でも安心できるStitchLinerに期待を寄せている。  その上で「日々、生産計画がぎゅうぎゅうに詰まっている最終工程は、翌日にお客様に製品をお届けしなければならないプレッシャーの中で仕事をしています。繁忙期はとくに機械の突発的な停止を避ける必要があります。納期への焦りが品質に影響しないためにも定期点検に加えて、ホリゾンと機械の稼動情報を共有しながら部品の経年劣化を把握し、故障の前に修理ができる環境ができればと考えています」(山本部長)と、メンテナンス体制の高度化も見据えている。