導入事例


キヤノンメディカルシステムズ株式会社

  • 導入製品
    ・紙折機 AFV-564F・自動無線綴機 BQ-480、BQ-270V・集積装置 BBS-40・本身投入装置 BBF-480・三方断裁機 HT-80・油圧断裁機 APC-610・卓上紙折機 PF-P3200・製本ネットワークフローシステム pXnet

デジタル化と自動化で、印刷工場の既成概念を変革

 栃木県大田原市にあるキヤノンメディカルシステムズ株式会社様は、CT、MRI、超音波診断装置、X線診断装置、検体検査装置などの医療機器の製造開発、販売、サービスを行っています。これらの医療機器に同梱される取扱説明書や、サービスマニュアルは、約20,000種類あり、全てを社内印刷で対応されています。

先端医療機器ビジネスのトップリーダーであるために

 先端医療機器ビジネスのトップリーダーである同社は、2018年1月4日にキヤノンメディカルシステムズ株式会社に社名を変更されました。ビジネスの成長にあわせて製品に同梱するマニュアルをタイムリーに製造していくことが今後益々必要になるため、この社名変更を機に、社内に新しいマニュアル印刷製造ラインを立ち上げるべく、2016年から準備を進めてこられました。導入検討プロジェクト内で決定したシステム導入のポイントは、3つです。印刷スペシャリストが不在でも運用できるシステムであること、自動化を追求すること、コスト削減とリードタイムを短縮することです。マニュアル印刷製造ラインには、マニュアルを作成するテクニカルライティング部門や、各機器の生産を担当する製造部門との連携も必要ということで、全社をあげた取り組みが行われていました。

20,000種類のマニュアルを社内生産するために13名削減?

 マニュアルの製造は、全て印刷会社様に外注されていました。約20,000種類にもなるというマニュアルは、日英中の3か国語が存在しています。A4換算で月400万ページ、5万冊というボリュームになります。外注先は、3台の枚葉電子写真方式デジタル印刷機と、2台の1クランプの無線綴じ製本機を導入し、20名で運用されていました。繁忙期は、生産が間に合わず残業や、休日出勤で対応をされていたそうです。
 各部門とのシステム連携開発が進んだ2017年9月に、インクジェット輪転デジタル印刷機と、ホリゾンの製本システムが設置されました。同時に、部内から7名のマニュアル製造ラインスタッフの方々が着任されました。部内から、医療事務や、テクニカルライターなどユニークな経歴の持ち主の方々が集まったそうです。今まで20名で対応されていた業務を、未経験者7名で対応されるというお話をうかがって非常に驚いたことを今でも思い出します。そして、7名の内3名の方が、製本工程のご担当です。ホリゾンスタッフによる3日間のオペレーショントレーニング後は、3か月間の自社内トレーニング、2か月の本番想定リハーサル期間を経て、2019年1月から実生産が開始されました。

未経験者でも作業ができることが機器選定の絶対条件

 ホリゾンの製本システムをご導入いただいたポイントを、八島センター長にうかがいました。「未経験者でも作業ができること、そのためには自動化が必須」という条件でした。導入させていただいた無線綴じ製本機BQ-480には、世界一号機となる本身自動給冊装置を提案させていただき、製本工程を完全に自動化できました。
 しかし、マニュアル製造ライン全体の自動化を実現するためには、製本機と上流工程の連携が必要になります。JDFを通じて生産状況、稼働実績を上流工程に受け渡す仕組みが必要になるため、製本ワークフローシステムHorizon pXnetをご導入いただきました。「医療機器は、命にかかわる製品なので、マニュアルには正確さが強く求められます。記載内容の間違いだけではなく例えば、数字の8が欠けて3になった場合や、落丁が発生した場合にもリコールが必要な可能性もあるため、良品だけを生産する仕組みが求められます。」と、医療機器用マニュアルの製造ラインに求められる厳しい品質管理体制を、兵藤主任からうかがっていました。そのため、折り丁を集積してブックブロックを作成するBBS-40に、落丁・乱丁をリジェクト(排除)するトラッキングシステムを提案させていただきました。デジタル印刷機で発生した印字不良を検査装置が検知し、トラッキングシステムと連動することで、ブックブロックの工程でリジェクト(排除)を行います。

自動化できなかった部分への対応

 運用上の課題がなかった訳ではありませんでした。自動三方断裁機HT-80から搬出されて最終成果物となったマニュアルにあわせて、ピックアップを行う人の手が足りないという問題が発生したためです。そこで、2019年11月に京都で開催されたTHINK SMART FACTORY2019で、参考出展を行ったデリバリースタッカーを導入していただきました。デリバリースタッカーは、1冊ずつ排出された本を、最大約35cmの高さまでスタックできるため、オーダー数にあわせて、冊数が異なるという多品種メガロットのマニュアルを取り扱う同社の運用に貢献させていただくことができました。

導入目標をクリアし、次の目標へ

 本稼働から1年が過ぎて目標として掲げられた30パーセントのコスト削減と、納期短縮を達成され、キヤノングループ全体のマニュアル制作の見本となっていらっしゃるということからグループ内の見学が絶えません。未経験者でもイキイキと活躍できる職場としても注目を浴びているそうです。また、印刷業界内でも注目度が高く、工場見学会などの問い合わせに、日々対応されていらっしゃいます。
 「印刷業界の未来をホリゾンと一緒に作っていきたいので、これからも一緒にやりましょう」というお言葉を、兵藤主任から頂戴しました。今後も、システムの拡張はまだまだ続くということですから、しっかりと提案をさせていただいて、キヤノンメディカルシステムズ株式会社様のお力になれるように努力させていただきます。